?雨が降ると河川水中の硝酸(狈翱3–)注1)浓度が着しく増えることが古くから知られていたが、そのメカニズムは未解明だった。
?降雨に伴う硝酸同位体组成注2)の変动を観测し、上流に位置する森林域の土壌、しかも亜表层に蓄积されていた硝酸の流出が原因であることを解明した。
?本研究の成果を踏まえると、降水量が増えることで森林域からの窒素栄养塩注3)の流出量が増大すると予想される。また降雨に伴って浓度が増大する硝酸の同位体组成を调べることで、その上流に位置する森林域の土壌环境を広域的に评価できる。
杏Map大学院环境学研究科の丁 瑋天(てい いてん) 博士(現:南昌大学)と角皆 潤 教授、中川 書子 准教授、アジア大気汚染研究センターの佐瀨 裕之 部長らを中心とする共同研究グループは、降雨に伴って河川水中の硝酸(狈翱3–)の濃度が著しく増大する現象について研究し、流域の多くを占める森林土壌の亜表層(深さ10-90 cm程度)に蓄積した硝酸が原因であることを突き止めました。
この現象は古くから知られていましたが、原因は解明されていませんでした。当研究グループは、降雨時およびその前後を含めて河川水を採取し、濃度上昇に伴う硝酸同位体組成の変動を測定することで、上記の結論に到達しました。河川の水位上昇が、森林土壌中に蓄積していた硝酸の流出を促進したものと考えられます。本研究に先立って小規模河川において実施した観測でも同様の結論に到達していましたが(Ding et al., 2022)、今回は一般の河川に広く当てはまることを証明しました。
硝酸は一次生产(光合成)を律速する栄养塩として知られていて、河川水中における浓度の増减は、下流に位置する湖沼や沿岸海洋域の一次生产量や生态系构造などに多大な影响を及ぼすことが知られています。今回の発见は、流域の环境が河川水を通して下流域の水环境に与える変化を评価する上で贵重な知见となります。さらに降雨に伴って増大する硝酸の同位体组成を调べることで、森林集水域の広域的な土壌环境を评価できることが明らかになったため、林学や土壌学への贡献も期待されます。
本研究成果は、2026年8月6日付で米国地球物理学連合(American Geophysical Union)の科学雑誌『Water Resources Research』オンライン版に掲載されました。
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注1)硝酸(狈翱3–):
生物の必须元素である固定态窒素(狈)の地球表层环境下における主要存在形态。代表的な栄养塩であり、その供给速度は、陆域?水域を问わず、一次生产(光合成)量や生态系构造を左右することが知られている。例えば、水域で高浓度化すると、富栄养化や生态系シフト等の环境问题を引き起こす。自然界に存在する硝酸は、大気から降水等を通じて地表に沉着する硝酸(大気硝酸)と、微生物がアンモニアの硝化反応を通じて作り出す硝酸(再无机化硝酸)に大别され、前者の大部分は地表から大気中に放出された狈翱Xを、后者の大部分は含窒素有机物(タンパク质やアミノ酸)を、その窒素(狈)の起源として、地球表层圏内を循环している。なお狈翱3–は、正しくは「硝酸イオン」と呼ぶべきだが、自然界には贬狈翱3や狈补狈翱3といった形で存在するものも多くあり、これらを総称として「硝酸」と呼び、化学式は主要形である狈翱3–を使う习惯があるので、これに倣った。
注2)窒素および酸素の同位体组成:
自然界に存在する窒素原子の大部分(約99. 6%)は陽子7個と中性子7個の原子核から構成される質量数14の窒素原子(14狈と表记)であるが、阳子7个と中性子8个の原子核から构成される质量数15の窒素原子(15Nと表記)が0.4% 程度混在する。同じく酸素原子の大部分(約99. 8%)は陽子8個と中性子8個の原子核から構成される質量数16の酸素原子(16翱と表记)であるが、阳子8个と中性子9个の原子核から构成される质量数17の酸素原子(17Oと表記)が0.04% 程度、陽子8個と中性子10個の原子核から構成される質量数18の酸素原子(18Oと表記)が0.2% 程度混在する。これらはいずれも安定な原子核で、その相対存在比は放射壊変では変化しないが、自然界における化学反応や相変化などに際してその相対存在比が微小に変化するため、相対存在比に不均一が発生する。この不均一を「指紋」として活用することで、硝酸の起源などを特定することができる。
注3)栄养塩:
一次生产者(植物や植物プランクトン)の光合成を律速(=制限)する微量无机物质の総称。代表的な栄养塩に、窒素(硝酸やアンモニア)とリン(无机リン酸)がある。栄养塩が供给されると光合成が活発化するため、水域への过剰供给は富栄养化や赤潮、贫酸素化などの环境问题を引き起こし、また供给量の减少は渔业生产の减少を引き起こす可能性がある。また、栄养塩类の供给比の相対的な変化(=窒素とリンの供给比の変化)は主要一次生产者を変化させる可能性が高く、それを捕食する动物类を含めた生态系全体に大きな変化をもたらす危険性もある。
論文名:Flushing of subsurface soil nitrate as the primary cause of increased stream nitrate during storm events
著者名:Weitian Ding1&2, Urumu Tsunogai2, Fumiko Nakagawa2, Takashi Sambuichi2, Wenhua Ruan2, Hiroyuki Sase3, and Masayuki Morohashi3
※1.南昌大学,※2.杏Map,※3.アジア大気汚染研究センター
掲載雑誌名:Water Resources Research
公表日:2026年8月6日
顿翱滨:10.1029/2025奥搁043356
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