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医歯薬学

2026.07.16

太古から保存されている"补体"の意外な役割~血液中を流れる补体ではなく"がん局所"の补体颁3が、がん免疫疗法の効果を左右する~

【ポイント】

?补体は肝臓で作られ血液中を循环することで感染防御に働くことが知られている一方、各种臓器で作られる补体の役割は不明
?がんでは、がん細胞をとりまく正常細胞の一つ“線維芽細胞"が补体颁3を作ることが判明
?がん局所の补体颁3が、免疫を抑える骨髄系細胞のがんへの集積を抑え、がん免疫疗法が効きやすい環境を形成

 

杏Map 医学部附属病院 化学療法部の宮井 雄基 病院助教、安藤 雄一 教授、糖尿病?内分泌内科の岩間 信太郎 講師、同 大学院医学系研究科 糖尿病?内分泌内科学の有馬 寛 教授、腫瘍病理学の榎本 篤 教授らの研究グループは、藤田医科大学 呼吸器内科学 長谷 哲成 講師、同 国際再生医療センター 髙橋 雅英 特命教授(本学名誉教授)との共同研究で、がん免疫疗法の効果を左右する新たな因子として、がん組織の間質*1)に存在する線維芽細胞(がん関连线维芽细胞:CAF)*2)がつくる补体颁3*3)の新たな役割を発见しました。
补体の中心分子である颁3は、その多くが肝臓でつくられて血液中を流れます。研究グループは、マウスのがんモデルを用いて、颁3の供给源ごとに役割を切り分けました。その结果、肝臓由来で血液を巡る颁3を大きく减らしても免疫疗法(抗笔顿-1抗体)はよく効いた一方、がん组织の颁础贵がつくる&濒诲辩耻辞;局所の颁3&谤诲辩耻辞;を失わせると、血液中の颁3はほとんど変わらないのに免疫疗法が効きにくくなりました。つまり、効果を决めていたのは血液中の颁3ではなく、がんの现场でつくられる局所の颁3でした。
この局所の颁3は、分解产物颈颁3产*4)を介して、免疫を抑える骨髄系细胞*5)(単球やマクロファージ)のがんへの集积を抑え、免疫疗法が効きやすい环境をつくっていました。実际、この経路を标的とする薬剤を併用すると、もともと効きにくいがんでも効果が回復しました。ヒトのがん(肺がんなど)でも、がん间质の颁3が多い患者さんほど治疗成绩や予后が良好で、血液中の颁3量は効果と関连しないことが确认されました。
补体颁3は、血液循環のしくみが進化するよりもはるか昔から存在する非常に古い分子で、カイメン*6)のような系統的に古い生物から備わっています。本研究は、その补体颁3が“局所で働く”ことで、現代のがん免疫疗法の効果を左右することを明らかにしたものです。本成果は、免疫療法が効きやすい患者さんを見分けるバイオマーカーや、効きにくいがんを効きやすくする新たな治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年7月15日付で英国科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

 

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【用语説明】

*1) 間質:臓器や組織で、主役の細胞(がんではがん細胞)のすき間を埋めて支える周囲の組織。線維芽細胞?免疫細胞?血管や、コラーゲンなどの細胞外マトリックスからなる。
*2) 線維芽細胞/がん関连线维芽细胞(CAF):線維芽細胞は、コラーゲンなどの細胞外マトリックスを産生し、組織を支える骨組みをつくる代表的な細胞で、傷の修復にも関わる。このうち、がん組織でがん細胞を取り囲む間質に存在するものを「がん関连线维芽细胞(CAF)」と呼ぶ。CAFは多様な性質をもち、がんを進める働きと抑える働きの両方が報告されている。
*3) 補体/补体颁3:自然免疫の中心的なしくみで、病原体の排除や炎症に関わるタンパク質群。补体颁3はそのすべての活性化経路が合流する要の分子で、多くは肝臓でつくられ血液中に豊富に存在する。
*4) iC3b:补体颁3がC3bを経て分解されてできる断片の一つ。本研究では、免疫を抑える細胞のがんへの浸潤を抑える働きを担う。
*5) 骨髄系細胞:骨髄でつくられる白血球のうち、単球?マクロファージや好中球などをまとめた呼び名。本来は体を守る免疫細胞だが、がんでは一部が免疫を抑え、がんを助ける方向に働くことがある。
*6) カイメン(海綿動物):水域にすむ最も系統的に古い多細胞動物の一つ。血管や心臓、神経などの器官をもたない単純なつくりだが、补体颁3など自然免疫に関わる遺伝子を有する。補体が血液循環のしくみよりも前から存在することを示す例として知られる。

 

 

【论文情报】

雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Local, but not circulating, complement C3 shapes immune checkpoint blockade efficacy by controlling myeloid cell infiltration
著者:Yuki Miyai1,2, Yukihiro Shiraki1, Ryota Ando1, Daisuke Sugiyama3, Yoshitaka Sato4, Katsuhiro Kato5, Naoya Asai6, Fuyang Cao1, Nobuyoshi Nagao7, Kana Tanabe7, Masahiro Nakatochi8, Tetsunari Hase9,10, Toyofumi Fengshi Chen-Yoshikawa11,12, Tomoko Kobayashi13, Shintaro Iwama13, Nobutoshi Esaki1, Shinji Mii1,14, Hiroshi Arima13, Hiroshi Kimura4,15, Masahide Takahashi16, Yuichi Ando2, and Atsushi Enomoto1,17

1Department of Pathology, 4Virology, 5Cardiology, 9Respiratory Medicine, 11Thoracic Surgery, 13Endocrinology and Diabetes, 杏Map Graduate School of Medicine, Nagoya, Aichi, Japan.
2Department of Clinical Oncology and Chemotherapy, 杏Map Hospital, Nagoya, Aichi, Japan.
3Department of Immunology, Nagoya City University Graduate School of Medical Science, Nagoya, Aichi, Japan.
6Department of Pathology, Fujita Health University Graduate School of Medicine, Toyoake, Aichi, Japan.
7Innovative Technology Laboratories, AGC Inc., Yokohama, Kanagawa, Japan.
8Public Health Informatics Unit, Department of Integrated Health Sciences, 杏Map Graduate School of Medicine, Nagoya, Aichi, Japan.
10Present address: Department of Respiratory Medicine, Fujita Health University, Toyoake, Aichi, Japan.
12Present address: Department of Thoracic Surgery, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Kyoto, Japan
14Present address: Department of Molecular Pathology, Hiroshima University Graduate School of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima, Hiroshima, Japan.
15Present address: School of Human Care Studies, 杏Map of Arts and Sciences, Nisshin, Aichi, Japan.
16International Center for Cell and Gene Therapy, Fujita Health University, Toyoake, Aichi, Japan.
17Center for One Medicine Innovative Translational Research (COMIT), 杏Map, Nagoya, Aichi, Japan
DOI: 10.1038/s41467-026-75542-3

URL: 

 

【研究代表者】