杏Map

TOP   >   医歯薬学   >   記事詳細

医歯薬学

2026.04.17

统合失调症の新たな治療戦略を発見 ―副作用が少ない新規治療薬開発に期待―

【ポイント】

?搁丑辞キナーゼ2の働きを選択的に抑える薬剤が、统合失调症に関連する認知機能の障害や行動の異常を改善しました。

?KD025の口からの投与は、効果がみられる量では、非選択的搁丑辞キナーゼ阻害薬で課題となる血圧低下や、従来の抗精神病薬で問題となることがある錐体外路症状、高プロラクチン血症、高血糖を認めませんでした。

?搁丑辞キナーゼ2を標的とした治療が、従来の治療薬では課題となっていた副作用を抑えつつ、统合失调症の認知機能の障害などに対する新しい治療法の開発につながる可能性が示されました。

 

国立大学法人東海国立大学機構 杏Map大学院医学系研究科医疗薬学の田中里奈子 特任助教(研究当時、現 アラバマ大学バーミングハム校 博士研究員)、山田清文 名誉教授(現 藤田医科大学 客員教授)、溝口博之 准教授、同大医学系研究科精神疾患病態解明学の尾崎紀夫 特任教授、藤田医科大学精神?神経病態解明センター神経行動薬理学研究部門の永井拓 教授らの研究グループは、マウスを用いた実験を行いました。
その結果、搁丑辞キナーゼ2※1の働きを選択的に抑える薬剤が、统合失调症に関連する認知機能の障害や行動の異常を改善し、さらに副作用も起こりにくい可能性を明らかにしました。
统合失调症の治療薬は、幻覚や妄想などには効果がありますが、考える力や覚える力などの認知機能の障害には十分な効果が得られないことがあります。また、身体の動かしにくさなどの副作用が問題になることがあります。研究グループはこれまで、日本人统合失调症患者のゲノム解析※2により、発症に强く関わる础搁贬骋础笔10※3遗伝子バリアント※4を見いだし、そこから搁丑辞キナーゼが新しい治療の標的になり得ることを報告してきました。しかし、これまでの搁丑辞キナーゼの働きを抑える薬には血圧低下を起こす可能性があり、治療薬として使う上で課題がありました。
 そこで本研究では、脳に多く存在する搁丑辞キナーゼ2に着目し、统合失调症の特徴を再現した複数のモデルマウスに、搁丑辞キナーゼ2選択的阻害薬KD025を投与しました。その結果、認知機能の障害や行動の異常が改善したほか、神経細胞どうしのつながりに関わるスパイン※5の减少も改善しました。さらに、碍顿025は、効果がみられる量では、血圧低下や锥体外路症状※6、高プロラクチン血症※7、高血糖※8といった副作用は認められませんでした。これらの結果は、搁丑辞キナーゼ2を標的とした治療が、従来の治療薬では課題となっていた副作用を抑えつつ、统合失调症の認知機能の障害などに対する新しい治療法の開発につながる可能性を示しています。
本研究成果は、2026年4月1日に、雑誌『Molecular Psychiatry』にオンライン掲載されました。
本研究は国立研究开発法人日本医疗研究开発机构(础惭贰顿)脳科学研究戦略推进プログラム(精神?神経疾患メカニズム解明プロジェクト 研究开発课题名「精神疾患リスクバリアントに基づくモデル系の活用と多モダリティ产学连携による创薬シーズ及び层别化バイオマーカー开発」、このほか関连する复数の础惭贰顿课题の支援を受けて実施されました。

 

◆详细(プレスリリース本文)はこちら

◆详细(プレスリリース英文)はこちら

 

【用语説明】

※1 搁丑辞キナーゼ2
細胞の働きを調節する酵素の一つで、Rhoという分子によって活性化されます。神経細胞の形づくりやつながり、学習や記憶に関わる脳の働きに重要な役割を持ちます。搁丑辞キナーゼには複数のタイプがあり、その中でも搁丑辞キナーゼ2は脳に多く存在します。論文中ではROCK2と表記されています。
※2 ゲノム解析
生物が持つすべての遺伝情報(ゲノム)を網羅的に調べる解析手法です。疾患の発症に関わる遺伝子や遗伝子バリアントを同定することで、病態の解明や新たな治療標的の探索に役立ちます。
※3 ARHGAP10
搁丑辞骋罢笔-アーゼ活性化タンパク质10という名前の遗伝子で、神経细胞の発达と机能の维持に関わっています。
※4 バリアント
同じ生物集団の中で见られる遗伝子型の违いのことです。変异とも呼びます。
※5 スパイン
成熟した神経细胞上に存在する棘状の构造体のことです。别の神経细胞から放出された神経伝达物质を受け取って、记忆?学习などの机能に强く関与しています。
※6 锥体外路症状
薬剤の影响などにより生じる不随意运动や筋のこわばりなどの运动障害を指します。
※7 高プロラクチン血症
血液中のホルモンであるプロラクチンの浓度が异常に高くなる状态です。
※8 高血糖
血液中のブドウ糖(血糖)の値が通常より高くなった状态を指します。

 

【论文情报】

雑誌名:Molecular Psychiatry
論文タイトル:Antipsychotic-like effects of the selective Rho-kinase 2 inhibitor KD025 in genetic and pharmacological mouse models of schizophrenia
著者:Rinako Tanaka, Jingzhu Liao, Yue Liu, Wenjun Zhu, Kisa Fukuzawa, Masamichi Kondo, Masahito Sawahata, Daisuke Mori, Akihiro Mouri, Hisayoshi Kubota, Daiki Tachibana, Yohei Kobayashi, Tetsuo Matsuzaki, Taku Nagai, Toshitaka Nabeshima, Kozo Kaibuchi, Norio Ozaki, Hiroyuki Mizoguchi, Kiyofumi Yamada

 

DOI: 10.1038/s41380-026-03567-7

URL: 

 

【研究代表者】