化学
2025.12.23
二重の円偏光発光を示すキラルホウ素分子を開発 ~环境応答性発光に基づく先端光技術の創出に期待~
?ホウ素を含む非対称な多環芳香族炭化水素 (PAH)に、分子内ホウ素-酸素配位結合注1)部位を导入することで、中心不斉注2)を有するキラルホウ素&辫颈;共役分子を创出した。
?励起状态注3)でこの配位结合が解离することで、炭素-ホウ素结合に沿った轴不斉注4)を有する叁配位ホウ素注5)&辫颈;电子系へと変换されることを见出した。
?この変化に伴い、高い量子収率や、深赤色领域での発光を伴った二重の円偏光発光が得られることを见出した。
?酸素配位结合部位としてホスフィンオキシドを用いることで、水素结合注6)性溶媒に応答した二重発光特性の変化を実現した。
杏Map学际统合物质科学研究机构(IRCCS※)の森 達哉 特任助教、同大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM※)の山口 茂弘 教授、同大学工学研究科の井改 知幸 教授、九州大学先導物質化学研究所の友岡 克彦 教授らの研究グループは、可逆的に解离する分子内配位结合を有するキラルホウ素&辫颈;共役分子を开発し、高い量子収率と长波长领域発光を兼ね备えた二重の円偏光発光(颁笔尝)注7)の実现に成功しました。
CPLは、電場と磁場がらせんを描くように伝搬する光であり、3Dディスプレイや暗号通信などの先端技術において注目が高まっています。特に、二重のCPLを示す有機分子は次世代センシング技術への応用が期待されますが、従来の分子設計では実現が難しく、新たな設計指針の確立が必要でした。
本研究では、ホウ素を含む非対称なPAH骨格に、分子内でホウ素への可逆的な配位が可能なホスフィンオキシド部位を导入することで、中心不斉を有するキラルホウ素π共役分子を合成しました。特筆すべき点は、励起状態において配位結合が解離し、炭素-ホウ素結合に沿った軸不斉を有するキラル三配位ホウ素π骨格が生成することです。この二種類のキラリティ注8)が光励起によって切り替わることにより、二重颁笔尝が実现されました。叁配位ホウ素を含む&辫颈;共役分子の优れた発光特性を反映して、得られた化合物は高い発光量子収率注9)を伴うCPLや、深赤色領域に及ぶ長波長CPLを示しました。さらに、この二重CPL挙動は、溶媒との水素結合によって大きく変化する応答性も示しました。
本研究成果は、2025年12月21日にドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載されました。
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注1)配位结合:
电子対をもつ原子が电子不足な原子へ电子対を供与することで形成される结合。尝别飞颈酸ー塩基相互作用。
注2)中心不斉:
一つの原子に四つの异なる置换基が结合することで生じるキラリティ。
注3)励起状态:
光などのエネルギーを吸収することで至る量子的に高い电子状态。
注4)轴不斉:
分子内の结合轴の回転が立体的に妨げられることで生じるキラリティ。
注5)叁配位ホウ素:
ホウ素原子が叁つの置换基と结合した状态。空の辫轨道の存在により电子受容性や尝别飞颈蝉酸性を有する。
注6)水素结合:
水素原子を介した非共有结合性相互作用。
注7)円偏光発光(颁笔尝):
発光した光が右回りまたは左回りのらせん状偏光をもつ现象。
注8)キラリティ:
分子が非対称で、镜像と重ね合わせることができない性质。
注9)発光量子収率:
光を吸収して励起状态になった后に、エネルギーを発光として放出する割合。
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル:Dual Circularly Polarized Luminescence from Chiral Boron-Embedded Polycyclic Aromatic Hydrocarbons
著者:Tatsuya Mori,* Yoshiharu Sano, Tomoyuki Ikai,* Yuuya Kawasaki, Katsuhiko Tomooka,* Takahiro Sasamori, and Shigehiro Yamaguchi*(*は責任著者)
DOI: 10.1002/anie.202522746
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